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GHOST IN THE SHELL2/イノセンス

イノセンス スタンダード版 [DVD]
という訳で、別名「攻殻機動隊2」とも呼ばれる「イノセンス」を見た。映画の表現技術が格段に進化したことで、前作とは違う魅せ方をしている所もとても興味深いが、独自の世界観・雰囲気をそのまま踏襲している所はやはり圧巻だ。

しかし、この映画は本当の意味で「2」である。前作を知らないと完璧に置いてきぼりにされる。この映画の主人公はダレなのか?と考えた時、私は見るまで「バトー」だと思っていたのだが、結局は「草薙素子」その人であり、彼女の存在そのものがこの映画のテーマである。そして、前作を知らなければ意味のわからないセリフや人物関係を中心に描かれている。

変な言い方をすると「前作で完結した!」と思っている人は、この作品を見なくてもいいと思う。さらに「前作はまだ見ていない」という人はハッキリ言って見ない方がいい。そういう映画だった。

前作よりもさらに哲学的なセリフが多く、それらは抑揚無く淡々と述べられていくので頭にあまり入らなかったようで覚えきれなかった。繰り返し語られる人間と人形との違いは何なのかという根深い部分はやっぱり難しいので、どうしても哲学的になってしまうんだろうが、こういう映画はもう映画館で見るんじゃなくて家で何度も繰り返し見ないと理解できないんじゃないか?と思ったりもした。

そもそもこの映画において「GHOST」とは何なのか?という答えのような物はやっぱり語られておらず、結局自分で考えなければならない。


映画とはちょっとはなれた話になるが、人間の「幻聴」とか「幻覚」という存在はゴーストのなせる業なのかも知れないと思う。具体的な例を挙げるなら、別にそのことを考えていたわけでもないのに、突然CMの音楽が頭の中でグルグルと回りだして「あーっ、もーっ、消えない〜」とジタバタしたり、誰もいないのになんだか肩を叩かれた感じがしたり、誰かの視線を突然背中に感じたりする。

私などはもはや病気に近いんじゃないか?と思うこともあるが、誰もいない場所で誰かの会話を聞いていることもある。想像力のたくましい人は「もしかしてそれは霊能力なんじゃない?」と思う人もいるかもしれないが、それは多分違う。私には霊感はまるで無いからだ。言うなれば寝ている時に布団の中で見る夢と同じ物なんだろう。白昼夢ってヤツか。イノセンス的表現を使えば、その会話こそが「GHOSTの囁き」なのかもしれない。*1

話を戻そう。作られたロボットである人形には魂が無い。ゴーストとは魂の事だという事はあえて今更いう事は無いだろうが、魂というのはかくも非合理的な現象を生み出すものなのかと思う。プログラミングされた知性を持つロボットには、本来こういった聞こえないハズの物が聞こえたり、見えないハズの物が見えたりする現象はセンサーのエラーであり、ありえざる欠陥として排除されるものとなる。

だが、その無駄・矛盾こそが、人が人として、生き物が生き物として個性を発揮できる唯一の存在だってことだ。

ま、私が力説するようなことではないけれど。

個人的にはやっぱり前作で終わってても良かったかな〜と思った。映画としては楽しめたんだけど、結局たどり着く「答え」は同じ場所だったんだもん。

*1:多分違う。それは「直感」と呼ばれる物だろうから...。