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天空の城ラピュタ

天空の城ラピュタ DVDコレクターズ・エディション
先日書いたナウシカ*1と並んでジブリの代表的作品のひとつなので、もはや説明の必要はないだろうと思う。
以前、一度だけコメントした事がある*2通り、私の中では未だにジブリ作品のトップに位置し続けている。そんぐらい好きなアニメ。多分、軽く二桁は見てる。単独の映画として見た回数としても明らかにトップにいると思う。他の映画に比べてダントツで。

なお、今回はかなり「アニメオタク的レビュー色」が強いので要注意。

っていうか、ここまであからさまに書くのは初めてじゃないだろうか。

ラピュタとコナンの相似性

何が好きなのか。これを語りだすともうお酒が入ってなくても一晩では語りきれないんじゃないかと思う。完璧なのだ。いろいろなものが。

もちろん、そこは流石に無理があるだろう!みたいに気にならない部分が無いとは言わない。

例えば、ラストに近いラピュタに全員集合する辺りで、パズーが崩れかけているラピュタ外壁の下側からドーラ一家を助けに向かうシーンなどは、幾らなんでも無茶だろう!?というルートを通るし、そこからラピュタ内部に侵入してシータを助けに行くシーンでも「いやそこは上れないだろう?」という展開はある。でも、これは大人が大人の意見としてツッコミを入れているだけであり、あの作品の世界では「それでいい」のだ。無為にツッコムのは、単なるヤッカミでしかない。

なので、この作品に関してだけはかなり自分的に贔屓した評価をしていると自覚した上でツッコミを入れることは出来ない。という事で、今回については他のアニメ作品との比較っぽい感じでダラダラとコメントしてみることにする。といっても、その中心は「未来少年コナン」だけど。明らかにそこ、意識してるでしょ?的な感じで。

パズーとコナン

同じ監督作品であり、世界観に似た部分があるので比較される事が多い「天空の城ラピュタ」と「未来少年コナン」。パズーとコナン、シータとラナを重ねてみた人は、私と同世代なら結構いたんじゃないかと思う。

確かに似ている。が、それでもやっぱり少しづつ違うのだ。そして、その違いがラピュタの完成度を高めていると思う。

コナンといえば、手と同じぐらい器用に使う足が特徴であり、また重力を無視したかのようなバランス感覚が特徴だ。常にはだしで場所を選ばず走る。壁を駆け抜けたり、飛んでいる飛行機の主翼上を走り、パイプに両足でつかまったり、無謀にもコナンを信じてフライングマシーンから飛び降りたラナを両手で受け止め、自分の体は足の指で踏ん張って支えるという荒業もこなす。(そのワリには重さを感じるんだから演出の妙だと感心せずにはいられないが)

パズーもコナンを髣髴させる動きをする。空から飛行石に護られて下りてきたシータを両手に抱えるシーンは、前のめりになりながらも足で踏ん張ってシータを助けるし、ラピュタに侵入するシーンでは、履いていた靴を脱ぎ捨ててはだしでつるつるのパイプの中を駆け上る。なんとなく似ている。

でも、コナンとパズーは明らかに違う部分がある。

のこされ島でかなり独自の進化を遂げた新人類的なキャラクター的特長を持つコナンに比べ、貧しいとはいえ普通の鉱山町のたくましい親方の下で育った、普通の人間のパズーは、それらのアクションはあくまでも「火事場のクソヂカラ」で行うのみである。

ハトにラッパを聞かせるなんて優しくてロマンチックな面があったり、街中の人と仲が良い好青年だったり、決断力と実行力に溢れたまさしく理想の主人公らしい面はあるけれども、やっぱりそれって別に特別じゃない普通の元気な男の子なパズー。

だからこそ、私達はパズーの活躍にハラハラしながら見ていられるであり、時折見せるありえないかのような活躍に、ヒーロー的な側面を見出せるんだと思う。

シータとラナ

パズーとコナンと同様、シータとラナも似ている。物語の謎の中心となるという点ではもちろん、巨大な組織に身柄をねらわれていて、逃げ出して助けられるという点でも一致している。また、一本筋の通った意志の強さを持ち、でも腕の力はないとても女の子らしく「護ってあげなくちゃ!」と健全なる男子なら誰でもが心奪われてしまいかねないぐらいの設定である所もとても似ている。

ラナは人や動物の気持ちが判るという超能力的な力を持っているという点で特別な存在だし、シータはラピュタの王族の値を引く特別な存在という点でも共通点がある。前段でも書いたが、ラナがコナンに飛びつくシーンと同じ様に、シータもまた燃え盛る捕らわれていた城から脱出するために、ドーラと共に駆けつけたパズーに飛び付いているシーンもダブる。

他にも一致する点は多々あり、この2人についても私の場合は語りだすと長くなることは明白だ。

だが、2人のキャラクター性の重なり方は、パズーとコナンにあった違いの様にはあえて違えていないんじゃないだろうか?とすら思っている。いや、むしろ同じなんじゃないか?とすら感じている。あきらかに監督の趣味なんじゃないか?ってくらいに。

いや、やはりこの2人は「主人公ではなくヒロイン」なのだ。作品の中心というよりも、物語、ストーリーの中心なのだ。もし、彼女達に力があったら、作品は彼女達を中心に回ってしまい、主人公達であるパズーもコナンも不必要になってしまう。

そういう点でもとても良いバランスだよな〜と感心せざるを得ない。

仲間の存在

物語を構成する上では、仲間の存在はとにかく大事だ。ハリウッド映画などの場合、基本的に主人公1人で何でも解決しちゃったりして、仲間は居るようで居ないという事も多い。刑事モノだと2人で十分ぐらいの感じで。

でも、日本人的な側面でやっぱり和を重んじているからか、仲間の存在はとにかく重要である。

主人公、ヒロインの場合と共に、仲間の存在もやっぱりラピュタとコナンでは同じ様に扱われている。貿易船なのにラナちゃんかわいさに誘拐騒動まで起こして捉えられてしまうダイス船長とか、シータを横取りしようとして最初からムスカと対立している海賊のくせに自分の呼ばれ方にはやたらとコダワリるドーラ船長とか。船長って呼びな!

これらのキャラクターがいることで、ストーリーとして大きな盛り上がりを見せながら、味のある展開と演出が出来ているんだと思う。緊張と笑いの緩急を振り分けて。

とはいえ違いはある。サブキャラクターである女性の立ち位置がそれ。

コナンの場合は「モンスリー」がその役目を担っており、紆余曲折合ってコナン達を助ける立場になるが、ラピュタの場合は「ドーラ」が引き受けている。そしてどちらも気が強く周りに有無を言わせない強気な発言をする「強い女性像」として描かれている。

とはいえ、共通点として面白いのは解釈の違いはともかくとして、どちらもツンデレ要素を持っている事じゃないだろうか。

え?モンスリーは判るけど、ドーラは判らないって?脳内で補完してください。さすれば判ってくるハズです。

アフターストーリーの重要性

さて、ここでやっとコナンから話が離れる訳なんだけど、私がラピュタを名作であるとする所以の1つが「エンディング」である。正確に言うと、「アフターストーリーの部分」である。

映画であれ漫画であれドラマであれ。どんな物語にもエンディングは存在する。だが、そのエンディングは登場人物たちの人生の一部を切り取ったお話としてのエンディングであり、登場人物たち全てのエンディングではない。むしろ、そこから始まる物語もまた存在するはずなのである。

このアフターストーリーについて、視聴者があれこれ妄想的に想像できる作品は、私の中では名作的ポイントがおのずと高くなる。逆に言うと、アフターストーリーに興味を持てない作品は、どうでもいいよ的評価になる。

ラピュタのエンディングは「巨大樹」が成層圏から地球を見続けるだけである。だが、それこそその直前に起こった出来事を小さな物事であったかの様に印象付け、その上で作中で活躍した人々の人生がその後どうなって言ったのかを空想するに十分な長期的な時間軸の存在が潜んでいるわけである。


パズーとシータはどこでどうやって過ごしているんだろうか。ドーラ達はまた海賊稼業に戻ったんだろうか、炭鉱町の人たちはどうしているんだろうか。彼らによって凶悪な支配から逃れる事が出来た他の地球の人たちはその活躍を知ることがあるんだろうか・・・など。もう、それを考えるだけで様々なストーリーが頭に過ぎる。もう一本も二本も物語がかけそうな雰囲気である。

同様にナウシカのエンディングも秀逸である。それぞれのキャラクターがそれぞれの立場で旅立っていく様を描いている。3年後、5年後、さらにその先が気になるエンディングという点ではとても美しいと思う。

逆に、個人的にエンディングがいまいちと感じているのは以前も書いたが「もののけ姫*3 だ。一応、含みは持たせたエンディングではあるものの、あまりにもそっけなく想像する気になれない。あと、アニメではないが最悪に近いラストだったのがスピルバーグの「A.I.」*4 である。もう二度とエンディングを見たくない程のがっくり感だった。個人的に。


エンターテイメントとして映画が存在しているのならば、やはり最後に余韻の様なものを味あわせて欲しいと思う訳で、そういう意味でも間違いなくこの映画はすばらしいと思う。ベタボメ。

どんなワケかはよく判らないが、そんなワケでやっぱり「天空の城ラピュタ」は私にとって最高傑作のひとつである。まる。

*1:風の谷のナウシカ:過去記事⇒id:kenbot3:20080618:p1

*2:もうひとつアニメネタ。:過去記事⇒id:kenbot3:19990318:p1

*3:もののけ姫:過去記事 ⇒ id:kenbot3:20041119:p1

*4:A.I.:過去記事⇒id:kenbot3:20040827:p1