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セブン・イヤーズ・イン・チベット

セブン・イヤーズ・イン・チベット [DVD]
この映画は2つの大きなテーマがある。1つは「人間的成長を遂げる主人公の登山家ハラーの物語」であるが、もう1つは「中国人によるチベットの侵攻・虐殺の物語」である。

私が日本人であり、日本と中国との国際問題に少なからず興味を持っているからかも知れないが、それでもこの映画が事実を元に作られた物語であるという前提を考えると、この映画に関しては前者よりも後者の方が重要な問題なんじゃないか?と思ってしまう。

ストーリーは大きく分けて4部構成であり、ヒマラヤの最高峰を目指すが、それが果たせず収容所へと送られるまで。収容所から脱走し、戦争が終わるまで山に身を隠そうと生き抜く様。チベットの聖地に足を踏み入れることが出来、そこで暮らす人々のやさしく暖かな心に触れることが出来る場面。そして、激動のチベットを映し出すシーンと。だから、実はチベットで起きた戦争の悲惨さというのは時間としてはあまり長くは無い。それに、お話の中心はあくまでもオーストリア人のハラーであり、彼の視点で描かれているので、客観的な表現に留まってしまっている。

あまり政治的なことは書きたくないが、この映画を中国人は見てどう思うんだろうか。中国では上映されたりしているんだろうか。この虐待が始まったのは第二次大戦後であり、チベット側の被害者も数十万とも百万人を超えるとも言われ、現在も(詳しいことは知らないが)続いているという。

国とは関係なく、争いとは残酷で無益な物である。この映画の中で中国人の軍事高官が「宗教は毒だ」と言うセリフがある。実際、宗教の名のもとに行われた戦争というのもたくさんあるが、争いを否定し、心と体の平安を求める宗教が決して毒だとは思わない。

この映画はその部分だけをクローズアップしないように作っているので、その悲惨さはあまり伝わってこないが、相手の思想や人権を踏みにじる行為は、どんな形であれ肯定されるべき物ではないことだけは確かだと思う。