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タイタニック

タイタニック [DVD]
選ぶ映画のタイトルがいつも思い付きなので、今まで紹介してこなかったのが不思議なぐらいだが、昨日*1思い出したのでちゃんと自分なりのコメントを書いておこうと思った。

ストーリーなどはわざわざ紹介するまでもない名作「タイタニック」だ。もちろん好きな映画だが、気になる点も沢山ある。今回は特に「ラブシーンの是非」について考えていきたい。

この映画は名作である。それは間違いない。私も「すげーっ」と思うシーンは沢山あったし、見終わった後に興奮したのもよく覚えている。でも、だからこそ言いたい事もある訳で、一番気になったのは「これって男性と女性で視点が違うよな?」という点だった。

ぶっちゃけ、この映画は「女性のための映画である」と考えている。男性が泣く映画というのはそう多くないことは知っているが、私もこの映画で泣くシーンは無かった。唯一、音楽隊のシーンはウルルッと来たが、よく考えればそこは本筋とは違うワケで、そこで泣いたから感動した!というのは少々乱暴だ。やはり、映画たるもの「主人公達」にどれほど共感できるか?が重要だと思っている。


さて、前述の通りこれは「女性のための映画」だと思っている。女性がヒロインである「ローズ」(ケイト・ウィンスレット)に共感できるのは良く判る。望まない結婚、高圧的な許婚、生気に満ち溢れた主人公「ジャック」(レオナルド・ディカプリオ)との出会い。そして本当の自分への開放。まさに、女性が望むシチュエーションが満載である。ついでに言えば、彼を助けるために死すら覚悟して頑張るところも堪らないだろう。うん。

では、逆に「男性の視点で」考えるとすると、まず「ジャックに共感できるか?」という点が問題だ。多分、共感できる人は少ないんじゃないだろうか。生き様がカッコイイという感じがしなくもないが、ヒーローと呼ぶにはちょっと頼りない所がある。もちろん、許婚よりはいい男な感じだけども、男として憧れる存在ではちょっとない気がする。


昨日も述べた車でのラブシーンだが、女性にして見ればかなり「グッ!」っと来るシーンなんだろう。自分の方から積極的に彼を誘っている辺り、ローズの決意の表れとしてはかなり明確なシーンである。映像美として想像力を全開にさせるうまい演出に、男としても官能的なものを感じなくもないが、個人的にはやはり「必要だったのかなぁ?」と感じている。単に「勢いに任せた情事」としか取れないのである。

理由は「彼らが居る場所が船の中であり、旅の途中である」という所だ。事故のあったポイントはまだ外洋であり、いくら速いタイタニックといえど、到着まであと数日の時間が掛かかるんじゃないかと思う。となると、あの船上で彼らはそれまでの間、逃げ続け・隠れ続けるつもりだったんだろうか。ましてや隠れきっていたとしても、船から2人仲良く手を繋いで降りられると思っていたんだろうか。どう考えても無理だと思う。絵が発見された後、修羅場が展開されることは流氷にぶつかる事より明らかであるからだ。そしてもちろん彼らはあの直後に流氷がぶつかることなど、知る由も無いハズである。なんか、その場の思い付きだけで行動した理性を欠いた行動に思える。

「恋愛は理屈じゃない」んだろう。「恋は盲目」ともいう。

でも逃げ場もない、隠れる場所もない船上で執拗にローズを口説き落としたジャックは、ヒーローというより単なるナンパ男でしか無い様に感じるのである。もし、あの事故が無くて無事に目的地に辿り着いたとして、彼らは本当に幸せになれたのだろうか?正直疑問すら感じる。*2

もし、あそこでジャックがローズに手を出さなかったら?着ている服の粗末さとは違って彼の心は紳士であり、大人な知性と理性をもつ人物である証明になったんじゃないかと思う。さらにその後彼らが命がけでお互いを守ろうとしたところなどは、単に情欲だけで結ばれた間柄ではないことを表現できたんじゃないか?と素人ながらも思ったりもする。


映画に限らず、商品として考える場合はマーケットを考えて、誰が「ターゲット」なのかを明確にする必要がある。この映画に関してはその点は完璧だったと思う。

ローズにとってはジャックはヒーローだったかも知れない*3。でも、私にとってはヒーローではなかったんだと思う。世の男性達もそう思っている人は多いんじゃなかろうか。

*1:コラム・映画のラブシーン:過去記事→id:kenbot3:20050613:p1

*2:って、作られた映画で何を熱く語っているんだか。

*3:そもそもローズの想い出話という設定なので、ジャックが「想い出として美化されている」と考える事も出来るけど。