半落ち
なんかこの所、諸事情によって本来のテーマである映画の話からかなり逸れていたので、心をほんの少し入れ替えて、ちょっと前に見た映画なんかの話題を久しぶりに書いてみる。
しかし、今日選んだタイトルは「今の自分の状況的にどうなのよ?」という感じもするけど、前から書いておきたかったので、ちゃんと書く事にする。
ここから先はちょい、ネタバレで。
でも、その前に一言。「邦画ってなんか音声聞き取りづらい」よね。洋画に慣れ過ぎているからかもしれないが、「字幕が欲しい」とマジで思った...。
いやまてよ?「洋画が聞き取りやすい」んではないぞ。「洋画は聞き取ってない」だけか。私の場合は。
さて本題。
淡々と進むストーリー。少しづつ明らかになる事件の真相。しかし、全てを解き明かす事が果たして本当にいいことだったのか。。。
この映画、前評判的に「イイ!」「泣ける!」って聞いてしまっていたので、どうにも構えてしまって私自身は泣けはしなかったんですが、思っていた以上に重いテーマであることに、衝撃と感動は受けました。この映画、いろいろな視点から見るととても面白い。そして、すごく深い。
アルツハイマー病の妻。壊れていく生活。白血病の息子。助けたいのに助けられない現実。夫婦愛、家族愛。命を助けること、命を奪うこと。何が正しいのかなんて判らない。命って、そして愛って何なのか。
主人公の梶(寺尾聡)の視点だけで見ると、これがテーマの様に見えるが、それはこの映画においては「一つのテーマ」だけに過ぎない。一つの事件に絡む「刑事」「検事」「弁護士」「裁判官」、そして「新聞記者」*1というさまざまな立場の人々が登場し、それぞれの視点にテーマが用意されている。もっとも、盛りだくさんな感じもあるので、内容的に薄いと感じる人もいるだろうけど。
さて、この映画のキーワードはシンプルだ。それは、
「新宿・歌舞伎町」。
人はこの言葉に、どんなイメージを持つのだろう。そのイメージに翻弄され、いろいろな人達は、それぞれの立場で行動する。真実を聞き出そうとする検事。身内の犯罪を隠そうとする警察。その対立を嗅ぎつけた報道。そして、ペンを拳として振り上げた後、その下ろし場所に悩む事になる。そして、それぞれの立場で解き明かそうとしたこの「新宿・歌舞伎町」というキーワードは、梶が隠そうとしていた本当の真実にやがて突き当たる。
結局、真実を知る事は「誰のため」だったんだろうか・・・。
今の世の中はとにかく複雑である。何が正しくて、何が間違っているのか。正しい答えがこの映画の中で語られている訳ではない。
そう、語りきれる訳がない。
複雑な社会を生きることの難しさが、この映画の最大のテーマだと思う。
*1:よくまぁ、コレだけの立場の人を、一つの映画に盛り込んだよな。