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スピリット

スピリット [DVD]

「セリフの無い」アニメーション映画。というと、ちょっと誤解があると思うのだが、アニメーションの世界では「動物同士がしゃべる」というのは結構普通だ。実写とは違い、動物の動きや表情を情緒豊かに見せることの出来るからだ。動物が主人公の実写もあるが、アニメの方が表現力に関しては一枚も二枚も上手だと思う。そんなアニメで作られた作品であるにもかかわらず、この映画は「動物同士が喋ることは無い」正確に言えば「人間の言葉を話さない」のだ。馬は馬なりの鳴き声と行動でお互いの気持ちを伝え合うコミュニケーションを取っている。

ストーリーは平原に生まれ育った主人公のスピリット(といいつつ、本当は馬なので名前は無い)が好奇心から近づいてしまった人間に捕まり、自由を求めてさまざまな苦難と冒険を経験する中で、新たな友情と愛を知り乗り越えていく・・・というお話だ。内容的には至ってシンプル。これで説明は終わりって感じ。

でも、この「人間と馬」という本来種族の違う生き物同士のコミュニケーションを、「セリフの無い」という演出のおかげで見事に表現していると思う。逆に言えば、これは表現力の豊かなアニメーションだからこそ出来たのかもしれない。最初から馬達が一切しゃべらないおかげで、人間と接触した時に馬達の動きで彼らの言わんとしている事が手に取るようにわかるのだ。オーバーアクション気味でもアニメだから違和感を感じないし、表情や間も作りやすい。実写ではどうしても無理が出てくる部分だ。言葉は通じていないのに、意志は通じているという感じがとても新鮮だ。

ただし、セリフがまったく無い訳ではない。スピリットの一人称的セリフ(意思)とナレーションがある。これが実はマット・デイモンの役目なのだ。渋い、渋すぎるよ。また、セリフではないがミュージカルっぽく歌がある。コレのあたりは飽きさせない工夫だと思う。
ストーリーそのものはひねった作りだったりはしないし、時間がちょっと短めなのが物足りないかもしれないが、この手のアニメーションとしては素直に楽しめる内容でした。