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合言葉はSite Seeing

100年後の歴史に。

私達は学校で歴史を学ぶ。
その歴史が正しいかどうかは、いく通りもの検証方法があるが、残念ながら歴史と言うものはいつの世も過去の歴史が正しいとは限らない。
歴史とは、残された数少ない検証資料や伝聞などにより『推測として正しい』とある程度定義付けられる程度のものであり、それが真実か、本当に正しいかどうかはその時代にそれを経験した人以外には判らないものだ。
いや、それですらその人の主観的なものであり全容ではないだろう。

紙が無かった時代

文字が開発された頃には、石に溝を刻んで人々はその時代を記録した。
いや、まだ文字が無かった時代でも壁画として当時の生活の記録を残していた。それを書いた人が、それを未来の誰かの為に残すつもりだったのかは判らない。だが、それが現在では歴史の検証資料として利用されている。
また、生活そのものを示すものとして、当時使っていたと思われる石器や道具などが発掘によって発見されることも有る。紙が無い時代でも、その時代の歴史を検証することは出来る。

紙が残された時代

人は発明した紙に文字を記すことにより、以前より多くの情報が残せるようになった。
人によっては後世に残すために書いた人もいるかもしれない。文字だけではなく、絵画という形や設計図などを残している人もいる。
時代によっては紙の質が悪く保存が効いていないこともあるが、運よく残っていたものは『貴重な資料』として現在も研究され、時折新たな資料の発見などにより『歴史が覆った』として話題になる。
芸術と言う視点では、紙が無かった時代と同じで彫刻なども紙と同様に歴史を検証する資料として存在しており、こちらは戦争や焼失、盗掘などによる破壊が無ければ紙以上に長期的に保存される貴重な歴史の資料となる。

それから数百年。いや、紙が登場したのが紀元前150年ごろとも言われていることから考えればすでに2000年以上。

人々は、様々な情報を紙に残してきた。

時に、人々の取り交わしとなる契約や取引の資料として。歴史的な出来事を客観的に書いたドキュメントとして。過去の偉人の直筆の手紙などは、貴重な資料、大発見としてニュースになることも多い。
時に、想像の翼を広げたノンフィクションの話として。もしかすると、私達が何百年も前の歴史的資料だと思っていたものは、その時代の創作小説である可能性もあるワケで、ともすれば『歴史の捏造』と取られかねない内容のものもある。

紙に残っている情報は、いろいろな、様々な情報に渡る。
社会的な情報も。個人的な情報も。貴重な情報も。秘密にしておきたかった情報も。

そして、今

今、ペーパーレスの時代が来ている。

資料は電子化され、本は電子書籍化も進んでいる。
それは、別に悪いことではない。便利だし、場所も取らないし、重さに悩まされることもない。

だが、それはこうとも言える。

『紙が無くなった時代』

と。

時々思う。この時代は新しい時代なのだろうか、と。

今から10年後は問題ないかもしれない。でも、100年後、1000年後。私達の時代を未来の人たちが見たときに、私達の歴史を知るための情報は残っているのだろうか。歴史を検証する情報は残っているのだろうか。

電子化された情報は、既に人の目では確認できない情報だ。

遠い未来の私達の子孫が、今の私達の大切に扱っている情報を何らかの形で手に入れた時。そこに、情報が残っていると気付くことはあるのだろうか。もし、その読み方が失われていたならば、気付かれないまま消えていくのではないだろうか。

それはまるで遺跡の中から発掘された文字に見えない石版のように。


『紙が無くなった時代』は、100年後の記憶として、歴史を、文化を検証する資料として、役に立たないのではないかと思うことがある。ただでさえ、数年で記録メディアが入れ替わり、10年、20年前のデータを見ることが出来なくなっている時代。子供の頃に撮ったビデオは、もう個人では見ることが出来ない。動画は写真ではないが、フィルムなら写真と同じ、だ。


歴史として残っていくものは、人が検証できる資料のみである。

自分達の周りにある情報は、いつまで残しておくべき情報なのか。
『自分は有名人じゃないし、残しておく必要は無い』という人もいるだろう。それはそれで一つの考え方だが、歴史の証明の為に使われる検証資料は、正しいかどうかだけであり、その当時の記録として価値があるかは未来の判断にゆだねられるものだ。
遺跡から発掘される土器などはもちろん、壁画ですら、歴史の証拠として後世に残すために書いたものではないだろう。


話は変わるが、私のこの日記。

何かの弾みで全て消えてしまう儚いデジタルな情報である。形のない情報である。*1

これは歴史の証明には一切利用されない。いや、出来ない。

そういうつもりで残している。

*1:はてなのサービスで書籍化することはできるけどね