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コラテラル・ダメージ

コラテラル・ダメージ 特別版 [DVD]
この映画を評価するのは難しいと思う。いや、ストーリーはそれほど難しくないし、内容的にも決しておかしいという訳でもない。むしろ、エンターテイメントとしての映画、アクションとしての映画などの側面から考えれば、それは結構いい作品だと思う。

じゃぁ、何が難しいかというとこの「タイトル」にある。

COLLATERAL (コラテラル)
平行する、従属[副次]的な

という意味だ。これにダメージが付くと、

COLLATERAL DAMAGE
付随的被害

という意味になる。「結果として避けられなかった尊い犠牲」というような解釈となる。この視点からこの映画について気付いた所を描いておこうと思う。

そもそも、この映画のストーリーを紹介するとこんな感じになる。

愛する妻と息子に囲まれて幸せの絶頂にあった消防士の主人公。だが、彼の元に不幸は突然舞い込んできた。妻と息子がテロの被害に巻き込まれて命を失ったのだ。単なる事件ではなく、国際政治的な事件に犯人逮捕を訴える主人公の怒りとは裏腹に、政府も世論も「これは仕方が無い事件だった」と彼を説得しようとする。
しかし、怒りのあまり我を忘れた主人公は、単身テロ組織の本拠地「コロンビア」に乗り込んでいくのであった・・・。

となる。

で、ここまで読むとアメリカ映画によくありがちな「家族の為なら、愛の為なら他の誰が犠牲になったって許される!」ぐらいの勢いな映画に見えるだろう。だが、この映画はその部分に少し違う解釈が入っている。


主人公が狙うのは「テロ組織」ではない。あくまでも「実行犯個人」だったりする。その手段として、国外逃亡した犯人を追いかけて本拠地に乗り込んだだけだ。(まぁ、明らかに強引な方法なのでそれもどうなのよという気がしなくは無いが)だがその行為もまた、「主人公自体が逆の立場から見たテロ行為をしている」のだという説明(展開)が行われている。だから、この映画の主人公がとった「復讐」という行為もまた「非難されるべきテロ行為なのだ」と落ちがつく。これは、今まででも珍しいパターンの展開だと思う。勧善懲悪型ではないという点で。

そして、政府の取っている行動にも多くの皮肉がこめられている。テロ組織壊滅の為に全軍を率いて「皆殺しにせよ!」と総攻撃を仕掛ける。運よく「(主人公も含めて)助かった人間がいた」ので「首都がまたテロの標的にされていて、既に現地入りしている」と気が付く訳だが、この時に作戦が成功してテロ組織を壊滅できていたのであれば、首都のテロもまた成功していたのではないかと思われる。その時に、また「避けられなかった尊い犠牲だった」と言えるのだろうか。


この映画において、語られているテーマは「親子・夫婦の家族愛」の様にあらすじから考えられがちだが、実はそうではないという所は気付かなくてはならないと思う。珍しくちょっと素直に感心した映画だった。いつもよりは。