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ザ・ファン

ザ・ファン [DVD]
なんだか恐ろしいほどの風の音に目が覚めたら、既に時間はお昼を回っていた。先週の無茶が少し祟ったかも。ま、そんな事はともかくとして、今日はこの映画を見たんで忘れないうちに書いておく。いや、冗談抜きに結構面白いと思った。いや、怖い・・・かな。

この映画のストーリーを説明するのは簡単だろう。「野球のこととなると人が変わったようになってしまう一人のファンの異常的犯罪事件」である。ジャンル的には「サイコ・サスペンス」って所なんだろう。そしてテーマは「行き過ぎたファン心理の異常性」となるだろう。

でも、果たして本当にそれが「テーマ」なんだろうか。


野球選手、スポーツ選手に限らず、もちろん歌手やアイドルなどでもファンの起こした事件と言う物は数知れず存在している。以前書いた「PERFECT BLUE*1もアニメながらもその一例であり、そういうテーマで描かれている作品も決して少なくない。

そういう作品の中で珍しいと言う点を挙げるならば、彼が「正常から異常へと移り変わった事情」という背景が描かれている点にあるのではないだろうか。昔から熱狂的ではあったかもしれないが、最初から彼が異常だったワケではない。そして、それを望んでいた訳でももちろんない。だが、家族、仕事、そして社会全体の様々な事情が彼を受け入れない方向に進んで行き、いつの間にか彼自身が追い詰められ、最後に残された物が「野球」だけだったという点が(多少時間が足りないと感じる点はありつつも)とてもよく判る作りになっている。


人はひとつの事に夢中になりすぎると、他のことはどうでも良くなり理性を失っていくというのは人の常であり、ある意味「他人事」とは言えない。そして人は何かに夢中になる事で、「個」を見つけ出す生き物だ。その対象は「人」であるとは限らず、「モノ」や「行動」そのものだったりする事もある。それを「趣味」とか「生きがい」と言うこともある。そしてそれはとても大切なことであることは間違いないのだが、その先にあるものが「異常性」なのだとしたら、私達は無個性でいるべきなんだろうか。個性を求めてはいけないんだろうか。

彼は「ファン」として異常だった訳ではなく、「ファン」であることで「誰かに必要とされていたかった」のだと言うことなんだと思う。そう、彼も結局は「人」なんだと、寂しい人間だったんだということだ。それが本当のテーマなんじゃないかという気がした。


ロバート・デ・ニーロ」が出ているっていうことでチェックしていたような気がするけど、見たことある人がたくさん出ていて意外に驚いた。「ウェズリー・スナイプス」ってあの「ブレイド」*2 *3の人だしょ?いや、ぜんぜん違って見えたわ。いい味出してたな〜。

もう一人のプレイヤーは「ベニチオ・デル・トロ」で、「トラフィック*4ハンテッド*5に出ている。女性DJはどこかで見たことあるな〜と思ったら「エレン・バーキン」で「恋する遺伝子」*6に出ていたようだ。なるほど、そうだったかもしれない。

って、こうやって挙げると今まで見た映画のリンク集っぽくなってしまった。でも、それに見合うだけの価値はあったかも。最近話題になる映画はとにかくいろいろなテーマが盛り込まれる傾向にあると思うが、この映画の場合は1つだけに絞り込まれている。だからこそ私達の心に強烈に訴えてくる何かはあるのではないだろうか。ピッチャーの放つ、ストレートのボールのように。

いや、それはボールではなく彼の放ったナイフだったのかも知れない。

*1:PERFECT BLUE:過去記事→id:kenbot3:20050318:p1

*2:ブレイド:過去記事→id:kenbot3:20050321:p1

*3:ブレイド2:過去記事→id:kenbot3:20050525:p1

*4:トラフィック:過去記事→id:kenbot3:20050518:p1

*5:ハンテッド:過去記事→id:kenbot3:20041122:p1

*6:恋する遺伝子:過去記事→id:kenbot3:20050623:p1