みた、こと。きいた、こと。

合言葉はSite Seeing

戦場のピアニスト

戦場のピアニスト [DVD]
収容所送りを奇跡的に免れた、ユダヤ系ポーランド人のピアニストが体験した第二次世界大戦・真実の物語。

実際にあった話を基にしている為、とにかくストーリーは淡々と進む。映像は目一杯、主人公の1人に絞込んで作られていて、それ以外の時間の流れはあまり判らないようになっている。それは、実際に隠れて生活していた人たちにとって、如何に情報が少なかったのかをも現しているのだと思うが、だからこそ軍隊の侵攻や爆発、暴動などのシーン以外は、派手な演出が殆どない。

だからこれ、めちゃくちゃ好みが分かれるだろうな〜と思う。映画に何を求めるかで、極端に評価が変わる。ちなみに私は「あまり好きではなかった」かな、正直言って。

この先はネタバレ。要注意!

私が映画に求める物の一つに、やはり「エンターテイメント(娯楽)」がある。つまり、見終わった後に楽しかった!と思える何かが欲しいと思うわけだ。その楽しいというのもハッピーエンドだけを求めている訳ではない。ストーリーの深さや、スリルを楽しむという事もあるだろう。それぞれの映画に課せられたテーマというのは違うわけだし、それぞれで納得の行く楽しさがあればいいと思っている。

しかし、「現実」というのは納得がいかない事がままある。「現実は小説より奇なり」という言葉は、一般的には「現実の方がスゴイ!」という良い感じのイメージで使われる事が多いが、逆に使うことも出来る。「現実の方が不条理だ」と。それだけ社会は複雑なのだ。

この映画は、その逆の意味で「現実は小説より奇なり」と言える作品かもしれない。結局、ピアニストは奇跡的に助かった訳だが、彼を助けた敵の将校があまりにも不憫に感じてしまう。見終わった後に、「彼はどうなっちゃったの?」と、主人公であるピアニストに共感するのではなく、後半の30分ぐらいしか出ていない将校さんにすっかり心を奪われてしまったのだ。そして、「現実に起こったこと」という有無を言わせないリアルさが、助かった主人公の酷い仕打ちに怒りすら覚えてしまったのだった。*1

この映画が見せたいテーマは「戦争の悲劇」であることは明白だ。だが、その見せ方というのは「リアルな現実を見せれば良い」という訳ではない、と感じさせられた。

*1:無論、主人公が将校を助けられたか?というと、無理だったんじゃ?とは思うが