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紅の豚

紅の豚 [DVD]
見たジブリの映画を順番に書くと宣言して、またしばらく放置してたんだけど、改めて書ける所から書いていくことにする。で、今回はこのタイトル。「紅の豚」。

とりあえず掴みの駄洒落として、

「ひどいっ!私の料理、食べてくれないの?ブタもやしだからって!」*1

とか言ってみるテスト。カ、カッコよくねぇ〜〜〜〜!!

さて、この映画。多分好み的に賛否両論分かれるだろうな〜と思っている。なぜならば、私も初見では「あれ〜?」と思ったのだ。実は。面白さがいまいち判らなかったというかなんていうか。だが、その後機会があって2回目を見た時に「おっ?」と思い、3回目、4回目と見て「ほほーっ」となった。

それは、戦闘シーンや格闘シーンこそあれ、ナウシカやラピュタなどの他の作品に比べると「ココッ!」という超絶な盛り上がりのシーンが無く、一見淡々としたストーリーとして進み、時として起こる展開がなんとも地味である事が要因の1つであり、やはり他の宮崎駿監督の作品と違って「主人公が男。しかも豚」という設定に「おや?」という違和感があった事がまた要因の1つだったんじゃないかと思っている。

でも、実はこの映画の売りはまさにその部分であり、そこに感情的にハマルと、「おっ!」と面白みを感じてくるようになるんだと思う。


私的に面白いポイントを3つ上げるとすると、

主人公ポルコの生き様
『カッコイイ』の一言に尽きる。何故「豚の姿」になったのかや、どうして「賞金稼ぎ」をやっているのかは、作中ではあまり表立って語られていないが、そこには彼なりの価値観に基づいた信念によって今に至っているという事実そのものが、彼の生き様としてのカッコよさだと思う。
ジーナやフィオとの関係
若くて勢いがあってちょっぴりかわいらしさもあるフィオは間違いなくこの作品のヒロインだが、ポルコと幼馴染みであり飛行艇乗り達の憧れの的のジーナこそが、この作品の新のヒロインである。彼女とポルコの距離感がもうたまらない。ポルコを愛しているからこそ結婚できない*2という流れは、切なさ爆発である。フィオもポルコに恋しているが、ポルコの生き様があんな感じであり、この作品のひとつの特徴である「盛り上がらない距離感」を保っているところが面白い。
過去と未来への時間経過
この作品は「ある意味唐突に始まり、唐突に終わる」。先にも書いたが、「何故豚の姿なのか」などの疑問は殆ど放置された状態で始まり、突然襲ってきた(正確には治安を乱しているのは主人公達の方だが)空軍に追い立てられて物語が終わってしまう。かなり時間が経過した後のシーンが少しだけ紹介されるが、それすらお話としてはかなり投げっぱなしな状態で終わる。だが、だからこそこの作品を見た人は想像力の翼を広げなければならず、広げてみた時に気付く様々な伏線が、この物語に厚みを持たせている。

この映画のキャッチコピーは

「カッコイイとは、こういうことさ。」

である。

天才コピーライターとして名高い「糸井重里」の作。もうね、この映画を最初に見た当時には意識してこの言葉を考えていなかったことを後悔しましたですよ。後で。この言葉は、とにかくこの映画を見事に表している。

この「カッコイイ」は、誰に冠されているのか?を考えると、これは作中の全ての人と言えるんじゃないかと思っている。それぞれが、それぞれの生き様として「カッコイイ」部分を持っている。ポルコの生き様はもちろん、全てを理解しているかのようなジーナの素振り、ある意味貪欲でお転婆なフィオもそうだし、その工場で働く女性達もまたカッコイイと呼ぶにふさわしい。時に敵ともなる海賊達も、子供達には一切危害を加えない自分達のプライドを持ったカッコよさがあり、イヤミな程にナンパなアメリカ人カーチスもまた色男でカッコイイ側面を持っている。

登場人物たち全てが、それぞれの立場や生き様として「カッコイイ」を追求している。

この映画は、そんな「カッコイイ」作品だ。

*1:ぶたもやし:過去記事⇒id:kenbot3:20041217:p1

*2:ジーナは、自分と結婚した3人の男性を事故で失っている。