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アメリカン・スプレンダー

アメリカン・スプレンダー [DVD]
この映画、面白いと思った。いい意味でも、悪い意味でも。
映画の中の主人公は普通、作られた主人公である。だが、この映画の主人公は実在する。それって「ノンフィクション」なんじゃん?と言えば、それはその通りかも知れないが、「この映画も含めて主人公の人生そのものなのだ」という所だと思う。

普通、映画は「その人が成しえた偉業」などをお話しにする。だから、映画が作られている時点では、基本的に「偉業」としては完結している。だが、この映画の主人公は「成し終えていない」という所がある。では、それって「自叙伝」かというと、それも違う。そこには普通「自伝を書いている自分」という部分は含まれない。

この映画は、この映画の中で映画を撮っており、この映画の公開も主人公の人生の1つであるということを描いている。また、その映画を鑑賞する観客もまた、彼の人生の一部に登場する人物であるというある種、不思議な世界観を形成している。

主人公は口が悪くて悲観的で被害妄想的でビジュアル的にあまりいいイメージは無いし、登場人物も個性的といってしまえばそれまでかも知れないけど、かなりインパクトの強い人たちが多いので、嫌悪感を抱く人もいるかも知れない。また、日常生活を描いているため、ダラダラとした展開の部分も多く、メリハリ無く飽きてしまう人も少なくないだろう。でも、この映画はそんな所も含めて彼の人生なんだという事を描いている。

タイトルである「アメリカン・スプレンダー」とは、この主人公である彼が登場する、彼の日常を描いたコミックである。私は原作を読んでいないが、きっとこのコミックの中では映画を撮っていた時の話なんかも普通に描かれていたのではないかと思う。それは彼の人生の一部であっただろうから。