地中海と瀬戸内海。

会社の自動販売機に、いつの間にか新しいジュースが入っていた。
自動販売機の前で、そのジュースをジーッと眺めていたら、新人くんがやってきて
『何をしているんですか？』
と聞いてきた。ん、いや、ジュースを買おうと思っているんだけど、この新しいジュースが気になってね？
『どこが、ですか？』
いや、ほら、『地中海レモンティー』って書いてあるんだけど、『ロシアンティー』とか『アメリカンコーヒー』みたいな感じで、特別な飲み方のレモンティーなのかと思ったんだけど、特に聞いたことないなぁ？と思って。

『はぁ。味が違うとかですか？』
うん。でも、答えはラベルのところに『地中海産レモン』って書いてあるから、単にレモンの種類が『地中海レモン』っていうだけなんだと気が付いたところ。レモンティーのブランドというより、レモンのブランドだとね。
『なるほど』
でもね。『果汁０．３％』って書いてあるんだけど、もうそれぐらい少なかったら地中海だろうが瀬戸内海だろうがたぶんもう判んないんじゃないだろうか？って思っていたところでね？
『はい』
日本人としてはやはり地中海レモンよりもなんとなく柑橘系と言ったら瀬戸内海！みたいなイメージがあるじゃん？
『イメージ』
そう。で、それなら『瀬戸内海レモンティー』があってもいいと思うんだけど、どうもたぶんそうはならなくて、それはきっと『レモンティー』なんだろうか？って思ったら、なんとなくこう不公平というか、ブランドってずるいって言うか、そういうことをぼんやり悩んでいたわけで。
『なるほど。で、何を買うんですか？』
あ、せっかくだからこの『地中海レモンティー』にするわ。
『するんですね。そこまで悩んで』
うん。まぁ、飲みたかったからね。なんとなくね。