みた、こと。きいた、こと。

合言葉はSite Seeing

熱伝導。

新人くんと作業中。
『○○さんって昔キャンプとかやってたんですよね』
と、言われた。どこの誰から聞いたのか判らないけど、そうですよ。最近は一緒に行ってくれる人もいないし、そもそも足となる車もないので、何もしてませんが。
『いいですよね。そういうのにあこがれるんですよ』
いやいや。別に特別なものじゃないだろう。
自分だってバーベキューとかやるんじゃないの?
『春ぐらいに同期みんなでやりましたけど、それからは全く』
そうかぁ。まぁ、春先のバーベキューは楽しいよね。でも、今の時期でもいいんだよ?
『えっ、寒くないですか!?』
という感じの長い導入で、『熱伝導の話』になった。

で、話の続き。

寒いけど、今の時期だから楽しめるバーベキューもあるんだよ?
と、答えると、意外と食いつきが良くて『どんなのですか?』という。
なので、
『真空断熱鍋って知ってる?シャトルシェフっていう製品が有名なんだけど』
と聞いた。知らないという。
これを使うとね、バーベキューで炭の火が起こる前に体を豚汁とかで温められるのですごく便利なんだよね。
と言うと、いろいろと気になりだしたのか質問してきた。
『そもそも、真空断熱ってなんですか?』
あぁ。それを語るには先ず構造の違いを知っておくべきで。
ってことで、「タンブラー」は知ってる?*1
『知ってます。飲み物を入れる奴ですよね』
そう、それ。あれも保温効果あるよね。あれ、なんで保温されるか知ってる?
『えっと、二重構造になっているからですよね』
です。なんだ判ってるじゃん。構造としては同じだよ。真空かそうじゃないか?の違いだけ。
『真空の鍋とタンブラーはどっちが優れているんですか?』
いや、何を持って優れていると評価するかにもよるんだし、メリットもデメリットもそれぞれあるワケだけど、保温とか断熱という意味では、真空断熱鍋の方が遥かに優れているよ。タンブラーは空気が中に入っているけど、真空じゃない分作りやすいよね。
っていうか、なんで二重構造だと断熱されるか知ってる?
『いえ、よく判りません』
なるほど〜。そこからか〜。
熱って何か知ってる?あ、理系だっけ?
『理系です。熱は運動エネルギーですよね』
それが判っていれば話は早い。運動エネルギーって、何の運動?
『分子・・・でしたっけ』
ですね。その分子がどんだけ激しく運動しているか?が熱だと思っていいです。
では、分子が作る3つの形態として、「固体、液体、気体」があるのはわかるよね?
『知ってます』
この3つって、何が違うか判る?
『えっと・・・密度ですよね』
です。判ってるじゃん。固体って動いていないように見えますけど、分子の運動エネルギーという意味では、ちゃんと動いていて、熱が高くなるとそれだけ激しく動いているんです。よく見えないだけで。
で、「熱伝導」って言葉は知ってるよね。
『知ってます』
この3つに真空を加えて「熱伝導率」の順番で並べると、物質によって変わることもあるけど、基本的にはこうなる。
「固体 > 液体 > 気体 > 真空」
なんでこうなるか判る?
『・・・いえ、そうなるんですか?』
うん。なるんだけどね。これ、さっきの答えで「密度」なんです。
運動エネルギーって、激しく動いているワケで、分子が隣の分子にぶつかると、隣の分子も激しく動くようになる。これが、熱伝導。分子がぶつからないと熱は伝導しないので、密度が高いほど熱は伝導しやすいんです。
『なるほど』
で、話を戻すと「真空」ってどういう状態?
『空気がない状態です』
なので、分子がいないので、熱が伝導しないので、熱が中に留まったままでいられるんです。
これが、保温と断熱の仕組み。二重構造で間に空気を挟んだり、真空にするとそれだけ熱が外に伝わらないで、内部の熱がずっと残ったままになるんだよ、と。


ちなみに冒頭の『秋にやるバーベキュー』の話。
事前に豚汁を作って家で暖めておくと、シャトルシェフの断熱効果で、会場でもまだ暖かいまま飲めたりするというお話ですが、「おしるこ」とかをつくって、バーベキューの炭火で餅を焼く、お正月バーベキューもオススメ。

もちろん、寒いので、暖かい上着は忘れ無い様にね!

*1:タンブラーといえば、以前こんなことがあった。魔法瓶の魔法。:過去記事⇒id:kenbot3:20080725:1216913502