匿名の個人名。
会社の人に聞いてみたところ、飲みきれなかった飲み物は給湯室の冷蔵庫にしまっておくのが通例だそうだ。調べてみると、若干スペースに余裕があったので、2Lのペットボトルで買った水をそこにしまって帰る事にした。*1
その冷蔵庫には使い方に関するルールの貼り紙がしてあって、
「必ず記名してください!無記名は処分します!」
なんて書いてある。まぁ、そりゃそうだとは思う。面倒だけど異論はない。
話は変わるが、新しいオフィスは「フリーアドレス」だ。*2 フリーアドレスの利点は実際の在籍者数より確保する座席数を少なめに調整したり、個人保有の資料を大量に保管させない「オフィス・スペースの効率化」だが、もう1つのメリットがある。
「座席を固定化しないことによる匿名性の確保」
だ。
情報セキュリティーの考えで、「誰がどんな仕事をしているのか」を秘匿しなければならない。フリーアドレスの場合、隣に座る人がどんな人か判らない為、書類の机上の放置はもちろん、付箋紙によるメモ紙、電話メモなども禁止されている。実際、社外だったり帰社後だった後の電話の取次ぎはメモの代わりにメールで行われている。
その為、座席には「個人を特定するための情報は置いてはいけない」という規定がある。
名刺や名前の書いてあるノートや手帳などは当然だが、私物であっても「あ、あの人の席だ」が判るようではダメというルールがある。
話は戻る。水の話。
冷蔵庫で保管してた水を、持ってきて机の上に置いた。
私の所属と名前が書いてある。ハッキリと。太いマジックで。
これもセキュリティー違反なのだろうか。それとも、水であっても毎回冷蔵庫から取り出してコップに注ぎ、仕舞いなおしながら飲めって事なんだろうか。体的には常温で飲むのが一番いいんだけど。水は。
昔、馴染みの居酒屋やカラオケスナックなどでは「キープボトル」が出来た。部署の上司や先輩達が共通で使っていた「ボトル名」があった。ボトルを空けてしまったら、次の人の為に同じ名前でボトルをキープし続けたあの時代。それさえ知っていれば、みんなで共有できたあの時代。その名前は個人ではなく、みんなが共有していた1つの「誰でもない名前」、「匿名の個人名」だった。だが、それでキレイに回っていた不思議な時代。
そういう時代はもう来ないのかもしれない。