みた、こと。きいた、こと。

合言葉はSite Seeing

取次ぎ不要がもたらすもの。

近々。近々、全社的にオフィスが「IP電話化する」と、通達があった。時期の程はよく判らないけど。
以前から一部の環境は試験的に導入がされていて、全社的に広げようって事になった。ま、これも時代の流れだし、それについてどうこうと別に文句をいう所じゃない。
だが、IP電話化するメリットの中で、本当にメリットなんだろうか?と思っている事がある。それは、「取次ぎ不要」のことである。

IP電話化のメリット

そもそも、オフィスのIP電話化を推進していく中で、よく上げられるメリットは以下の5つである。

導入が簡単
イントラネットのインフラが構築されていれば基本的に直ぐに導入できる。
コスト削減
インフラの効率的利用、点在するオフィス(ビル間)の専用線の廃止、外部発信用回線の共通化など。また、料金体系も通常回線と異なり、安価なプランがある。
電話帳検索
アドレス帳をネットワーク上に共通的に準備出来る為、部署の移動や座席が変更になっても、個人を検索しやすい。
取次ぎ不要
個人を特定して架けられる為、ダイレクトに着信させることが出来る為、取次ぎは不要となる。
在席確認
ネットワーク上に存在しているかを確認出来るため、在席中か会議中かなどの個人のステータスをいつでも把握する事が出来る。

いや、整理の仕方や観点の違いで、これ以上にもなるし、以下にもなる。音声通話の品質的な所はまだ発展途上ともいえるのであえて言及していないが、「デジタルの為、クリアな音声である」とうたう業者も少なくはない。

その中で、冒頭にも述べたが、「取次ぎ不要」は本当にメリットなんだろうか?という事を考えておきたい。

取次ぎ不要の流れ

もちろん、デメリットではない。AさんからCさんに用事がある電話なのに、Bさんが仕事の手を止めて電話に出て、Cさんに取り次ぐ。これをBさんを経由しないで行うのは、間違いなく業務効率化である。Bさんは仕事を妨害されないし、自分の仕事に集中できる。

だが、である。そうなると、結局Aさんは話が通りやすいCさんにしか連絡を取らないことになる。BさんはAさんの事をいつまでたっても知ることはなく、Cさんの仕事の内容についても知る機会を損失する。

もちろん、取次ぎの際の「お、○○さんか。最近どうよ?」的な雑談が大事だ、と言っている訳ではない*1が、AさんとCさんの仕事の間にBさんはいつまでも入れず、Bさんは何も知らずに蚊帳の外であり続けてしまう。

取次ぎ不要がもたらすもの

ハッキリと言う。Bさんを新人と定義する。オフィスにかかってくるいろいろな会社の様々な仕事の電話が、ダイレクトに個々の担当者に入るようになると、新人は「いつまでたっても "どんな仕事" を "誰がやっている" のか把握する事が出来ない」のだ。知る機会の損失だ。

そして、彼らの電話が鳴る事は殆どないだろう。なぜならば、まだ業務経験の浅く、話が通り辛い彼らに、直接電話を掛ける人はいないからだ。そして、電話応対の経験を与えられず、スキルが上がらないまま、2年目、3年目のベテランと呼ばれる域へと自動的に送られていく。次の新人に業務を教える先輩として。


私はそうやって先輩の仕事を覚えてきた。それは既に古い考え方、やり方なのかもしれない。でも、取次ぎの際の「電話です」「ありがとう」というやり取りも含め、私は必要なことだと思っている。

業務効率化の名の下に、本来大事な「成長させる機会」*2を与えない仕組みが出来つつある。そして、取次ぎの会話も感謝もない、殺伐とした職場に変わっていく。

そんな、気がしている。

*1:電話取次ぎの際の雑談も、コミュニケーションという意味では少なからず合って然るべきだと思うが、それはまた今回とは別の話。

*2:成長させる機会は、今や「社内」ではなく「社外研修」として「会社がお金を払って行うもの」になっている。