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合言葉はSite Seeing

ガサ入れの報復。

今は昔、TRPGといふものやりけり。野山にまじりて獣を狩りつつ、冒険といふ事に酔いしれけり。
・・・という時代が私にはあった。「TRPG?それって何?」って人の為に書くと、「テーブルトークRPG」と呼ばれるもので、パソコンやゲーム機を使わない、言ってみればアナログなロールプレイングゲームの事だ。1人でやるものではなく、最低でも2人。大規模なものになると、同時に十数人で遊ぶこともある。

この場合、他の人たち(プレイヤー)を楽しませるためにルールや世界観を把握し、ストーリーの進行や状況の管理をする人が必要で、その人を「マスター」と呼ぶ。
そして、このゲームをやるには、プレイヤーはマスターに自分のやりたい行動を「口頭で申告」する。ここがゲーム機などでやるRPGとの大きな違いになる。コンピュータの元でやる時には、まず「出来ること」がメニューやコマンドという形で提示されている中から「自分で選択」する(画面上の移動も行動の選択肢の一つだ)のに対し、ぶっちゃけて言えばTRPGは何でも出来た。自分のイマジネーションの思いつく限りの選択肢があり、マスターが世界観として許せば何でも出来た。そういうゲームである。


さて、話を戻す。昔、このマスターをやっていた時代がある。もちろん、時間に余裕があり、仲間も集まりやすかった学生の頃だが、後輩が入ってきた時にショックを受けたのだ。

彼らが選択する行動はゲーム機でやるロールプレイングゲームのそれと同じだったのである。

これには少し驚いた。というか、ショックを受けた。簡単に言えば、

  • 他人の家の棚とか樽とかに「何か無いか」探す。
  • 町に着いたら情報集めの為に「酒場」に行く。

という事を選択したのだ。

冗談の様な話だが、本当の話だ。ゲーム機では当たり前の事かも知れないが、普通に考えてそんな行動はしないだろう。町に着いたら最初にするのは宿の確保であり、情報収集はその後にするものだ。

ただまぁ、酒場での情報交換については、あながち間違いとまで言えない所はあるので、責めるにはあれかも知れないが、他人の家の棚とか樽を探すなんて行動を言い出した時には、さすがに開いた口が塞がらなかった。

それ、友達の家に遊びに行ってやるものでもないでしょう?

いや、もしそれをやったとしたら、それは間違いなく「ガサ入れ」の世界だ。その後の友達関係とかも危うくなるほどの。というか、それは明らかに強盗の世界だ。なにせ、冒険者は武器を携帯しているし、体格がいい人たちが何人も押しかけているわけだし。


そんな事を、何度も繰り返し、挙句の果てには(既に日は落ちたと状況説明をしていたにも拘らず)

「する事が無いので、経験値稼ぎに町の外に出ます」

と軽率にも言い出したので(言い出したのは1人だけだった)、そのキャラクターは遭えなく、辺りの家畜を普段から襲っていた狼の群に遭遇してしまい、まだ冒険が始まったばかりだというのに、周りに助ける仲間もいない中、誰にも看取られること無く無残な最期を遂げてしまったのでした。

めでたしめでたし。*1

*1:狼を差し向けて襲ったのは、その時マスターであったこの私だ。