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インファナル・アフィア

インファナル・アフェア(低価格版) [DVD]
人間には得手不得手というものがある。もし、私が「潜入捜査官をやれ」といわれても、多分3日でボロが出て今頃どこかの海でプカプカと浮いているかもしれない。

ふと、暴力団同士の抗争とかで犠牲者が出たりしているが、その内の何人かは本当は潜入捜査官かなんかで、実は正義感と勇気にあふれた凄い人なのかもしれないと思った。そういう存在がいることは、警察だってあまり公には出来ないだろうし、だとするととても悲しいことかもしれない。

と、作品とは関係ないところまでもいろいろと考えさせられてしまったこの映画。前から見たいと思っていたんだが、連休ということでじっくりと見れたた。いや、ホントに凄いわこれ。

この映画の凄いところを挙げろというと、「突っ込みどころが無い」という所と「続編が期待できる」というところにあると思う。最初から3部作で構成される予定だったという事を聞いていたが、特に「続編が期待できる」というところは絶妙だ。


映画の続編を作る際に、一般的には「後日談」で繋げるのが常識的な所がある。後から2作目、3作目を作っていくと決まった作品に関しては当然といえば当然の流れで、その代表的な例は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」であり「マトリックス」だと思う。だが、この手法には利点と欠点が挙げられる。利点は「次回作では人物紹介などを省くことが出来る」という点だが、問題点とは「本来は1作目で完成していたストーリーのバランスが、無理やり続編を作って伸ばすことで崩れてしまう」という事に他ならない。

ロード・オブ・ザ・リング」のように、最初から長編で作る予定だった作品でも実は問題点がある。それは「全体で起承転結を構成しなくてはならないため、1作目、2作目はインパクトが弱くなってしまう」という所だ。実際、映像的には1〜3作通してすばらしい物があるが、アカデミー賞で最優秀作品賞を取ったのは3作目だけだったことでも言えると思う。


この作品は(私の記憶が確かならば、だが)1作目が始まりと終わりを描いており、2作目で過去を、3作目でその続きから結末までを描いているという。今、既に3作目も上映しているというので間違いがあるかもしれないが、事前に調べるのもちょっと「勿体無い」気がするので、間違っててもまぁいいや!と、続きが見れる機会を楽しみに待ちたいと思う。

つまり1作目が終わった時点で物語としての終着点は強いインパクトとともに頭の中に埋め込まれていて、残りの2作品は「より詳しく知りたい人は彼らの背景を見て欲しい」と時間の限られている映画で語りつくせない部分を補足するという構成なのだ。なんとなくドラマのような映画だな〜と思ったのだが、これがなんとも期待させる刺激的なお話なんだからもう堪らない。


と、文章が長い割りに内容があまり無かったので、もう1つだけ自分の率直な感想を述べる。「トニー・レオン最高!」だ。この映画は「無間道」という絶えることの無い地獄の苦しみをテーマとしているという。二人の主人公はそれぞれ地獄を味わうことになっているが、よく見るとそれぞれ同じではなく「本当の地獄はどちらなのか」を遠回しに描いている。二人の女性に愛され、自分の素性を知った仲間にも慕われた男と、恋人も仲間もいない自分を隠し続ける寂しい男と。その辺りは作品を見てから判断してもらいたい。さて、トニー・レオンはどっちでしょう。いやいやいや。



この映画、ハリウッドがリメイク権を争ったとか聞いているが、どうなったんだろうか。正直言って「そんな必要は無い」と思った。むしろ、アクションが派手になるだけで、駆け引きの内容そのものが希薄になってしまうんじゃないだろうな?とちょっと本気で心配した。これで完成していると思うけどな。マジで。*1

*1:どうでもいいが、アンソニー・ウォンが「カルロス・ゴーン」に見えてしまったのは私だけだろうか。ボス。って感じ。