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ハルク

ハルク [DVD]
あまり説明の必要がない映画だと思う。怒ると緑色のモンスターに変身してしまう男の人の物語だ。原作はアメリカンコミック。コミックの映画化というのはいろいろな問題を巻き起こす。

私はアメコミのコアなファンという訳ではないので、原作を読んだこともない。昔の作品(ドラマ?)も見たかもしれないけど、既に記憶の彼方であまり覚えていない。そんな訳でかなり期待して見てしまったのだが、見終わった後に思った感想は「やり過ぎだよな〜」だった。


まだ見ていない人もいると思うので、ここから先はネタバレで。

さて「ハルク」。映画として言えばよく出来ているし面白い。実験室のディテールや、実験そのものの表現はかなり凄い。オープニングではどうやって実験が進んでいったのかをダイジェスト的に見せてくれるんだが、これが想像力を書きたてる内容で、なかなか秀逸だ。また、コミックを意識した「画面割り」っぽい表現方法を使うので、1つのシーンで複数画面(視点)を同時に見せてくれる。これは、なかなかうまい表現方法で、将来的にはコミックの映画化以外の作品でも使えるんじゃない?と思えるような感じだった。

そんなハルクなんだが、「やり過ぎだよな〜」と思ったのは、単に「キャラクターが超人過ぎた」所だ。CG/VFX技術が上がったことで、今まで出来なかった映像表現がハルクでも出来るようになった!リメイクどころじゃないぞ!・・・という、意気込みや気持ちは判るんだが、「悲劇の超人」ではなく「喜劇の超人」となってしまっていた。

具体的に言う。
まず、空が飛べる。天井を突き破ったり、壁を飛び越えるぐらいは我慢できる。でも、「一飛び、数百メートル」となってしまっては、もはやギャグとしか捕らえられない。
そして、高い所から落ちても死なない。ジェット戦闘機に捕まったハルクは、そのまま成層圏*1まで連れて行かれる。そして、意識を失ったハルクは戦闘機から手を離し、自然落下する。普通死ぬだろうが、そこがハルク。川の中に落ち、追い討ちのミサイルの集中砲火を浴びる中、下水道まで逃げ込んで、街中にゴジラよろしく登場する。ウガオーッ!


・・・ありえない。


なんだか、見ている内にどんどん否定的になっていく。ハルクが戦車に襲われた時、砲身を掴んで戦車を振り回す。「砲身だけで戦車の重量を支えられるワケないだろう」とか、「ハルクの体積って、何倍になってるの?密度は薄くなってるじゃない?」とか、「なんでパンツだけ破けないで伸縮するんだよ。すごいストレッチだな〜」とか、変な心配までしてくるようになった。ダメ、だ。

きっと、私もマンガやアニメの世界だったら多分気にせず見ていたと思うが、リアルな映像の前ではそんな所も気になってくる。実写には実写の良さ、アニメにはアニメの良さという物はやはりあるのだと思ってきた。


それと、お父さんの存在も弱い。いや、強烈過ぎるんだが、その強烈さを生かしきれていない。ストーリーが息子のブルース/ハルクを中心に展開するからかもしれないが、ハルクより明らかに悪者なのに、悪に徹していない。あっさり軍隊に捕まってるし、変身してからは「あれ?」ってほどあっさり退場する。存在そのものが中途半端だ。最後はもっと「親子対決」の様相を前面に出して欲しかった。そういう意味では軍隊がでしゃばり過ぎて無駄に時間を使ってしまったのかもしれない。


ハルクの誕生が悲劇的なだけに、涙が出てきた。違う意味で。

*1:たぶん、高度は10kmを超えていたと思う。雲が切れて星が見えてたし。