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ホワイト・オランダー

ホワイト・オランダー [DVD]
15歳の少女、アストリッド(アリソン・ローマン)の身に起こった出来事を淡々と綴った映画。と、言えるかも知れない。しかし、見終わった感想としては、微妙に思うところが違った。

この映画、前述の通りアストリッドの物語だ。彼女の唯一の保護者である母親のイングリッド(ミシェル・ファイファー)が起こした事件により、投獄され身寄りのない身となる。その後、施設と里親との間を行ったり来たりする間に、不安定な思春期の少女はいろいろな事を経験していく・・・という感じで、基本的なストーリーは彼女を中心として最初から最後まで通して語られる。殆ど一人称視点だ。

で、あるにも拘らず、私として一番印象に残ったのはお母さんであるイングリッドの生き方、考え方だった。そう、これは「イングリッド、お母さんの物語」と。

以下、ネタバレじゃないけどちょっと長いんで。

面白いな、と思ったのは「刑務所内で変化のない母親」と「会う度に変化している娘」という構図だ。

里親の影響を受けて日々落ち着きなく変わってしまう娘。そこには、今まで唯一の存在だった母親を失った後の、どこに自分を置いていいのか判らない儚く脆い、娘の心境を表している。父親のいなかった事から年上の男性に憧れたり、今まで知らなかった母親の愛情を里親から受けることで、今まで生きてきた自分が正しいのか、そうでないのか判らなくなっていく。

それに対し、自分の考え方、自分の生き方にプライドを持ち、自分のしたことに責任を取るというまっすぐな生き方の母親。そこには迷いに当たる物はない。刑務所に投獄された母親の罪は?といえば、間違いなく『有罪』なんだろう。そこに『免罪』といった不安定な要素はなく、その罪そのものに母親は真っ向から立ち向かっている。ただし、「私は悪くなんかない」と思っている。だからまっすぐ自分を保っていられる。変わる必要がないからだ。

刑務所内の様子は一切映像には出てこない。しかし、母親からの言葉や顔に出来たアザなどからその苦労の程はしのばれる。でも、私は変わる必要はないのよ?と思って生きている訳だ、母親は。

強烈な母親の生き方と、その生き方を押し付けられる事に葛藤する娘の物語。どう捕らえるかは人それぞれかもしれない。生き方を押し付けるやり方はいけないかもしれない。でも、私は母親の「今の自分を否定しない」という生き方をそこから感じ取った気がする。


そんな生き方は、ちょっとカッコイイと思った。

余談だけど。

里親の一人として出てくるのがレニー・ゼルウィガー。ちょっと前に見た「シカゴ」の主人公だ。なんていうか、同じ人とは思えない。ERのカーター先生(ノア・ワイリー)も出ていました。ちょっとだけど。びっくり。